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ニュースと不動産

一関の「白い農地」と、農地に土を入れるという話

「一関の白い農地」というニュースをご存じでしょうか。

新聞やテレビでは「農地法違反」「違反転用の長期化」として報じられています。一般の方からすれば、「自分の土地なんだから好きにすればいい」「役所への届け出をうっかり忘れただけの話でしょう」と感じるかもしれません。

ただ、盛岡で長年この仕事をしてきた立場から見ると、少し違う景色に見えます。手続きの不備というより、土をどう処分するかというお金の流れが、農地の上に乗ってしまった話ではないか。あくまで私の見立てですが、そう感じています。

農地は、勝手に埋められない

農地を農地以外の用途に変えるには、農地法に基づく転用の許可が必要です。許可を出すのは原則として都道府県知事(指定市町村では市町村長)で、農業委員会は申請の窓口となり、意見を付けて県へ上げる立場になります。市街化区域内の農地であれば農業委員会への届出で足りますが、それ以外は申請さえ出せば通るというものではありません。

農業振興地域の農用地区域、いわゆる「青地」に入っている農地なら、まずその区域から外してもらう手続きから始まります。

ここは実務をやっていると、案外はっきりしています。要件を満たす話であれば、数か月から一年ほどで筋道が見えてきます。逆に、何年経っても進まないという状況は、たいてい手続きが遅いのではありません。最初から下りない案件を、下りると信じて待っているだけ、ということが多いのです。

つまり農地の転用は、待てば通る手続きではありません。通る土地か、通らない土地か、そのどちらかです。

そして今回の一関の件で使われたのは、この転用許可ではありませんでした。「農地が低いので、盛土をして耕作の利便を図りたい」という、農地を農地のまま良くするための、いわゆる農地改良の届出です。転用ではありませんから、手続きははるかに軽くて済みます。

造成で一番お金がかかるのは「土の出し入れ」

不動産の造成現場で、実のところ一番お金がかかるのは何か。土砂の出し入れです。

山を削るにも、窪地を埋めるにも、重機とダンプを手配して、出た土を受け入れ先まで運ばなければなりません。この運搬と処分に、まとまった費用がかかります。だから逆に言えば、「引き取ってくれる場所」には値段がつきます。

どこかの現場で出た土を、「農地の改良」という名目で、無償に近い形で、あるいは費用を受け取りながら置いてこられたらどうなるか。出す側は処分費が浮き、受け入れの段取りをした側にはお金が残ります。

一関で盛られたのは、石灰混じりの砂などだと報じられています。広い範囲の農地が、耕作できない状態になりました。

さらに引っかかるのは、届出書の中身です。情報公開で開示された届出書の半数を超えるものに同じ文言が並び、筆跡も酷似していたと報じられています。所有者への聞き取りでは、盛り土材を提供した業者が作成したという回答が相次ぎ、業者側も代行して提出したことを認めているとのことです。

地主さんが一人ひとり、別々に思い立って同じ文章を書くということは、まずありません。

是正を求められるのは、土地の所有者です

この問題では、地元の集落が受け取っていた交付金の返還が持ち上がり、市の職員が処分される事態にも発展しました。盛った土をまた運び出すという、それだけの話が、非常に大きな金額として算定されています。

そして、農地法上の是正を最後に求められるのは、原則として土地の所有者です。書類を代わりに書いてくれた相手ではありません。

「違法だとは思わなかった」という所有者の声も報じられています。おそらく本当だろうと思います。だからこそ、この話は他人事ではありません。

手口は時代とともに変わってきました

農地をめぐるトラブルは、実は日常のすぐ隣にあります。

昔は、どうしても許可の下りない農地を宅地として使うために、あの手この手で強引に話を進めるケースが少なからずありました。正面から申請しても通らないと分かっているから、別の入口を探す。動機の構造は、今回の件とそう変わりません。

あるいは、農地法の仕組みそのものを知らないまま、許可を取らずに小屋や住宅を建ててしまい、後から発覚して身動きが取れなくなるパターン。その後始末は、売る側にも買う側にも重くのしかかります。

最近であれば、山林や農地に太陽光発電のパネルを敷き詰めるための、無理のある申請や強引な造成もあります。

守るべき線は昔から変わっていないのに、その線をまたぐための理屈だけが、時代ごとに新しくなっていくように見えます。

「タダで平らにしてあげます」と言われたら

盛岡周辺でも、市街地から少し外に出れば、代々受け継いできた農地を持て余している地主さんは大勢いらっしゃいます。草刈りだけで一年が終わる、という話もよく伺います。

そこへ、「草刈りも大変でしょう。うちがタダで土を入れて、平らな駐車場にしてあげますよ」という感じのいい業者さんが現れたら、いったん立ち止まってください。

その土は、どこから来た土なのか。書類は、誰が書いているのか。その工事は農地改良なのか、それとも実質的な転用なのか。

土地は、持ち主の責任がどこまでもついて回ります。「知らなかった」では済まないところが、農地法の怖いところです。

土地の活用に迷われたら、土を入れてしまう前に、地元の事情と法律の両方を知っている相手に一度ご相談ください。工事が終わってからでは、選べる道がぐっと狭くなります。

本記事の一関市の事案に関する記述は、岩手日報および報道各社の報道(2026年8月時点)に基づく整理であり、当社が独自に調査した事実ではありません。農地転用・農地改良の取り扱いは農地の区分や自治体によって異なりますので、個別の案件については農業委員会等の窓口にご確認ください。

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